転籍の退職金はいくら?会社清算で300万円上乗せされた実例

転籍の退職金はいくらもらえる?会社清算に伴う転籍で勤続1年8ヶ月・約300万円の実例を示すアイキャッチ

グループ会社への転籍を打診されて、退職金がどうなるのか気になっていませんか。

もらえるのか、なしになるのか、税金はいくら引かれるのか。

調べても人事担当者向けの解説ばかりで、受け取る側の実際はなかなか見えてきません。

この記事では、転籍時の退職金の取り扱い3パターンと税金の計算方法を、実例ベースで解説します。

結論からいうと、転籍で退職金が勝手に消えることはなく、扱いは転籍同意書へのサイン前に確認できます。

私は会社の清算に伴って転籍し、勤続1年8ヶ月ながら約300万円の特別退職金を受け取った当事者です。

申告書の記入から税金の支払いまで、一連の手続きを経験しています。

この記事を読めば、自分の退職金がどのパターンに当てはまり、税金がいくらになるのか、サインの前に確かめるポイントが分かります。

目次

転籍で退職金は「なし」になる?減る?|3つの取り扱いパターン

いーしげ

グループ会社に移るだけなのに、退職金がなしになったらどうしよう…

転籍しても、退職金が自動的に「なし」になるわけではありません。

どう取り扱うかは、会社の規程と、本人が同意する転籍の条件で決まっています。

理由は転籍の法的な性質にあります。

転籍は、いまの会社との労働契約をいったん終了し、転籍先と新しい契約を結び直す手続きです。

形のうえでは「退職」と「入社」がセットで行われるため、元の会社の退職金をどうするかを、必ずどこかで決めることになります。

決め方は、大きく3つに分かれます。

  1. 精算パターン:元の会社の規程で計算した退職金を、転籍のタイミングで受け取る
  2. 引き継ぎパターン:転籍時には受け取らず、勤続年数を通算して転籍先の退職時にまとめて受け取る
  3. 併用パターン:転籍時に一部を精算し、残りを転籍先へ引き継ぐ
転籍時の退職金の取り扱い3パターン(精算・引き継ぎ・併用)の分類図

私が経験したのは1の精算パターンです。

どれになるかは本人が選べるものではなく、原則として会社間の取り決めと退職金規程で先に決まっています。

だからこそ、転籍同意書にサインする前に「精算か、引き継ぎか」を確かめておくことが唯一の防衛策になります。

「グループ会社だから当然引き継がれるはず」という思い込みが、いちばん危険です。

なお、転籍時に見ておくべき項目は退職金だけではありません。

有給休暇・社会保険・同意書の中身まで含めた確認事項の全体は、次の記事にまとめています。

グループ会社への転籍のデメリット|経験者の確認事項4つ

この章の論点
  • 転籍は「退職+入社」。退職金の扱いは規程と同意条件で必ず決まっている
  • 精算か引き継ぎかは、転籍同意書へのサイン前に確かめる

会社都合の転籍で退職金が上乗せされた実例|勤続1年8ヶ月で約300万円

私の転籍は、勤めていた会社の清算に伴うものでした。

2017年、退職区分は会社都合。

このときの勤続は1年8ヶ月です。

正直なところ、「この勤続年数なら、退職金は出ても50万円もいかないはず」と思っていました。

実際に受け取ったのは、約300万円の特別退職金でした。

一時金での受け取りです。

金額を知ったとき、頭に浮かんだのは喜びよりも「なぜ?」でした。

からくりは会社の清算にありました。

会社を畳むにあたり、清算資金の一部が従業員に割り当てられたのです。

就業規則の退職金規程どおりの計算とは別枠の、清算局面ならではの上乗せでした。

ここから言えるのは、退職金には「規程の建前」と「実際の運用」の差があるということです。

会社都合の転籍、とくに清算や事業撤退のような局面では、従業員への補償として規程を超える上乗せが行われる場合があります。

ただし、上乗せの有無も金額も会社の体力と判断次第です。

私の約300万円はあくまで一例で、同じ清算でも金額は会社ごとに変わります。

確実に言えるのは、会社都合の転籍では規程どおりの額とは限らない、ということだけです。

だからこそ、提示された条件をよく読む価値があります。

受け取りの手続きも書いておきます。

支給の前に、会社から「退職所得の受給に関する申告書」を渡され、記入して提出しました。

後日、給与のものとは別に、退職所得用の源泉徴収票も受け取っています。

この申告書を出すかどうかで、退職金にかかる税金の計算方法そのものが変わります。

源泉徴収票は再就職や確定申告で必要になる場面があるため、捨てずに保管しておくと安心です。

この章の論点
  • 会社都合・清算局面の転籍では、規程とは別枠の上乗せ支給が行われる場合がある(金額は会社次第)
  • 「退職所得の受給に関する申告書」は支給前に記入・提出。退職所得用の源泉徴収票は保管する

転籍の退職金にかかる税金|退職所得控除の計算と申告書

いーしげ

300万円ももらったら、税金でごっそり引かれるんじゃ…

私が約300万円の退職金に対して納めた税金は、16万円ほどでした。

手取りベースでは、9割以上が手元に残りました。

退職金の税金がここまで軽いのは、「退職所得」という優遇された区分で計算されるからです。

計算式は次のとおりです。
(退職金の額 − 退職所得控除額)× 1/2 = 課税対象の金額

ポイントは2つあります。

1つ目は退職所得控除で、勤続20年以下なら「40万円 × 勤続年数」を退職金から差し引ける仕組みです。

勤続1年未満の端数は1年に切り上げ、計算結果が80万円に満たないときは80万円まで引き上げられます。

2つ目は、控除を引いた後の金額をさらに半分にしてから税率を掛ける点です。

二段構えで課税対象が圧縮されるため、同じ額を給与で受け取るよりも税負担はずっと軽くなります。

私のケース(2017年当時)に当てはめてみましょう。

退職金約300万円の税金を計算する4ステップの図。退職所得控除80万円を引いて2分の1にした約110万円が課税対象で税額は約16.6万円

源泉徴収された記憶の「16万円ほど」と、計算がほぼ一致します。

この優遇計算には条件が1つあります。

前の章で触れた「退職所得の受給に関する申告書」の提出です。

申告書を出さずに受け取ると、優遇計算が使われず、退職金の額面に一律20.42%の源泉徴収がかかります。

約300万円なら60万円超が引かれる計算です。

払いすぎた分は確定申告で取り戻せるものの、最初から申告書を出しておけば済む話なので、支給前に必ず記入して提出してください。

この章の論点
  • 退職金は(額 − 控除)× 1/2 の優遇計算。約300万円で税金は約16.6万円だった(2017年時点)
  • 申告書を出さないと額面に一律20.42%の源泉徴収。支給前の提出が確実

勤続5年以下は要注意|転籍の退職金と2022年の税制改正

2022年1月から、勤続5年以下で受け取る退職金は「短期退職手当等」と呼ばれ、税金の計算が一部変わりました。

転籍で勤続年数がリセットされた人に直結する改正です。

変わったのは、控除を引いた後の金額のうち300万円を超える部分の扱いです。

この部分には「× 1/2」の優遇が使えなくなりました。

短い在籍で高額の退職金を受け取る形の節税を防ぐのが目的です。

裏を返せば、控除後300万円以下の部分は、いまも変わらず1/2の優遇計算が使えます。

短期退職手当等の判定分岐図。控除後300万円以下なら全額2分の1の優遇、300万円超は超えた部分に優遇なし

私のケースを現行制度に当てはめ直してみます。

切り上げ後の勤続2年は5年以下なので、短期退職手当等に該当します。

ただし控除後の金額は約220万円で、300万円以下。

全額が従来どおりの1/2計算の対象となり、仮にいまの制度で受け取っても、税額は2017年当時とほぼ同じ水準に収まります。

注意が必要なのは、控除後の金額が300万円を超えるケースです。

会社都合の上乗せで退職金が膨らみ、かつ勤続が5年以下という組み合わせは、まさに転籍や清算の局面で起こります。

該当しそうな場合は、受け取る前に「控除後の金額が300万円を超えるか」を試算しておくと、手取りの見込み違いを防げます。

税制は今後も変わる可能性がある点には留意が必要です。

実際に受け取る際は、国税庁のタックスアンサーで最新の取り扱いの確認をおすすめします。

いーしげ

僕と同じ控除後300万円以下なら、いまの制度でも税金の重さは変わらないんだ

この章の論点
  • 勤続5年以下の退職金は、控除後300万円超の部分だけ1/2優遇の対象外(2022年〜)
  • 控除後300万円以下なら従来どおり。私の実例は現行制度でも税額がほぼ同じ

転籍先に退職金を引き継ぐ場合|勤続年数の通算と退職所得控除

転籍時に受け取らず転籍先へ引き継ぐパターンでは、「勤続年数の通算」が税金面の主役になります。

退職所得控除の勤続年数をどう数えるかで、最終的な税額が大きく変わるためです。

一般的な取り扱いは次のとおりです(実際の適用は各社の規程と支給の実態によります)。

  • 転籍時に退職金が支払われていない場合:転籍前と転籍後の期間を通算して、退職所得控除を計算できるのが原則です
  • 転籍時に退職金が支払われている場合:控除を一度使った期間について調整が入り、単純な通算にはなりません

勤続年数が長いほど、控除は大きく育つ仕組みです。

20年を超えると、1年あたりの控除は40万円から70万円に増えます。

そのため通算できるかどうかの差は、長く勤めた人ほど金額に響きます。

私のように転籍時に精算した場合、転籍先での勤続は転籍後からの数え直しです。

私は勤続1年8ヶ月での精算だったので、失うものはごくわずかでした。

ただ、長年勤めた会社からの転籍で精算型を提示された人ほど、通算リセットの影響は大きくなります。

転籍同意書を見るときは、「精算か引き継ぎか」に加えて、引き継ぎの場合に勤続年数が通算されるのかまで押さえておくと安心です。

勤続年数の通算比較図。引き継ぎ型は転籍前後を通算できるが、精算型は控除の勤続年数がリセットされる

もう1つ、退職所得控除はiDeCoや企業型DC(確定拠出年金)の一時金とも枠を共有しています。

DCは掛金や運用益が税制優遇される制度ですが、優遇は入口の話で、出口の一時金は退職所得として課税の対象です。

つまり受け取り方を間違えると、せっかくの優遇を出口の税金で取り返されかねません。

退職と同じ年に退職金とまとめて受け取ると、控除は合算で1回分しか使えない決まりです。

別の年にずらせば済む、という話でもありません。

退職金を受け取る前9年以内にDCの一時金を受け取っていると、控除が調整されるからです。

これがいわゆる10年ルール(2026年1月改正)です。

転籍や退職のタイミングでは、退職金とDCをセットで考える必要があります。

企業型DCを放置した場合の期限と手順は、次の記事にまとめました。

確定拠出年金の退職後放置|組織変更3回の私が調べた期限と手順

この章の論点
  • 引き継ぎ型は勤続年数の通算がカギ。転籍時に退職金が出ているかどうかで控除の計算が変わる
  • 退職所得控除はiDeCo・企業型DCと枠を共有。同じ年の一括受取は控除1回分、ずらしても10年ルールの調整あり

まとめ|転籍の退職金はサイン前の確認で決まる

最後に、この記事の要点を整理します。

  • 転籍は「退職+入社」。退職金は精算・引き継ぎ・併用の3パターンのどれかで扱われる
  • 会社都合や清算の局面では、規程を超える上乗せが行われる場合がある(私は勤続1年8ヶ月で約300万円)
  • 税金は(額−控除)×1/2の優遇計算。「退職所得の受給に関する申告書」の提出を忘れない
  • 勤続5年以下は短期退職手当等に該当。控除後300万円超の部分は優遇の対象外
  • 引き継ぎ型は勤続年数の通算がカギ。DCの一時金とは控除の枠を共有する

次のアクションは2つです。

転籍を控えている人は、同意書にサインする前に「精算か引き継ぎか」と申告書の扱いを会社に確認してください。

すでに受け取った人は、そのお金の置き場所を考える段階です。

私がメイン口座にしているSBI証券については、こちらの記事で書いています。

SBI証券4年目の本音レビュー|いま口座開設する手順も解説

サインの前に確かめるポイントさえ押さえれば、転籍の退職金は不安の種ではなく、これからの備えの元手になります。

いーしげ
氷河期世代として、非正規雇用や一人老後の不安と向き合ってきました。

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