転籍は拒否できる?その後の3つの流れを転籍経験者が解説

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「グループ会社に籍を移してほしい」。

転籍の打診は、ある日突然やってきます。

断りたい。

でも、断ったら会社に居づらくなるのではないか。

そう思って検索しても、出てくるのは会社側に向けた解説ばかりで、断りたい本人の目線の情報はほとんど見つかりません。

この記事は、その本人の目線で、転籍を断る場合の制度と現実をまとめたものです。

結論からいうと、転籍は拒否できます。

労働契約の相手が変わる以上、本人の同意なしには成立しないのが原則だからです。

私は2017年に転籍を経験し、いまの会社では入社してすぐ、就業規則の転籍条項を自分の目で確かめました。

拒否した経験はありません。

だからこそ、当事者の目線で調べ切っています。

読み終えるころには、拒否できる法的な理由、拒否したその後に起こりうる3つの流れ、断る前に確かめるべきことが分かります。

会社と揉めるためではなく、自分で決めるための材料にしてください。

目次

転籍は拒否できる?結論は「個別同意が原則」

転籍は拒否できます。

これが原則の答えです。

理由は、転籍が労働契約の相手そのものを変える異動だからです。

雇い主を変えるには本人の承諾が要る、と民法625条1項が定めています。

配置転換や出向と違い、転籍だけは「籍」が別の会社へ移ります。

だから会社が一方的に命じることはできず、応じるかどうかは本人が決められます。

「転籍は強制ですか?」という疑問への答えも同じです。

強制はできません。

私も2017年に転籍を経験しました。

受け入れるかどうかを自分の意思で決める場面が、実際にありました。

転籍は辞令に従う異動ではなく、本人が答えを出す異動です。

では、就業規則に「会社は転籍を命じることができる」という条項があったらどうでしょうか。

この点は専門家の間でも議論がありますが、条項があるだけでは足りず、本人の個別同意が原則とされています。

入社時に転籍への明確な同意があった場合など、例外が認められる余地はあるとされます。

それでも、少なくとも「規則に書いてあるから拒否できない」とはなりません。

転籍と出向の違いの図解。出向は籍が出向元に残り働く場所だけ移るが、転籍は籍ごと移り労働契約の相手が変わるため本人の個別同意が原則(民法625条1項)
この章の論点
  • 転籍は労働契約の相手が変わるため、本人の個別同意が原則(民法625条1項)
  • 就業規則の条項だけでは強制できないとされ、応じるかは本人が決められる

転籍と出向の違い|拒否できるかはここで分かれる

転籍と出向は似ていますが、拒否できるかどうかの扱いが分かれます。

出向は、籍を出向元に残したまま別の会社で働く異動です。

就業規則などに根拠があれば、本人の個別同意なしに命じられる場合があります。

一方の転籍は籍そのものを移すため、個別同意が原則です。

「出向は拒否できないが、転籍は拒否できる」という単純な二分法を見かけます。

ただ、これは正確ではありません。

出向も、同意の要否は就業規則や契約の内容によって分かれます。

自分に来た話がどちらなのかは、辞令や説明の言葉で確かめる必要があります。

私はいま出向中の身です。

籍が出向元に残っているかどうかで、退職金や労働条件の扱いはまるで違ってきます。

このあたりは過去記事でも書いてきました。

出向先にそのまま転籍したい場合は出向先にそのまま転籍するときの確認6項目、出向の人選の実情は出向に選ばれる人の4つの構造が詳しいです。

もうひとつ知っておきたいのは、転籍を断った結果、籍を残す出向の形に切り替えて打診し直されるケースがあることです。

会社にとって転籍と出向は、近い目的で使われる制度だからです。

断ったら話が終わるとは限らず、条件を変えた再提案が来ることも想定しておくと落ち着いて対応できます。

では出向のほうは断れるのか。

分かれ目と拒否した場合の流れは出向拒否で退職・解雇はある?応じた私が調べ切った分かれ目にまとめています。

この章の論点
  • 出向は同意なしで命じられる場合があるが、転籍は個別同意が原則
  • 転籍を断った後、出向への切り替えで再打診されるケースもある

転籍を拒否したらその後どうなる?考えられる3つの流れ

拒否した後に起こりうるのは、大きく3つです。

元の会社に残る、別の形の異動を打診される、退職の方向で話が進む。

この3つに分かれます。

前提として、拒否を理由にした解雇は無効と判断されやすい、というのが一般的な考え方です。

断った翌日にクビ、とはならないのが原則です。

ただし、その後の配置や扱いには会社の判断が大きく働きます。

順番に見ていきます。

転籍を拒否した後の3つの流れの図解。元の会社に残る(配置転換とセットの場合あり)・別の形の異動=籍を残す出向への切り替えで再打診・退職の方向(会社都合かは状況次第)

元の会社に残る(残留・配置転換)

もっとも多いと考えられる流れです。

転籍は成立しません。

雇用は元の会社で続きます。

ただし、転籍の話が出た背景には組織側の事情があるため、社内の別部署への配置転換とセットになることがあります。

ここで注意したいのは、配置転換は転籍と別物だということです。

社内の異動である配置転換は、就業規則に根拠があれば会社の裁量が広く、原則として拒否できません。

「転籍は断れたが、遠い部署への配置転換になった」という展開はありえます。

報復人事が怖いとき

いーしげ

断ったら、会社に居づらくなるんじゃないか……

検索データを見ると、「転籍 拒否 報復人事」と調べる人が毎月一定数います。

断る権利があると分かっていても、断った後の扱いが怖い。

それが本音だと思います。

制度の建前では、拒否を理由とした嫌がらせ的な処遇は許されません。

ただ、現実の職場でそれを証明するのが簡単でないのも事実です。

だからこそ、転籍の打診から断るまでのやりとりは、日時と内容をメモに残しておく価値があります

記録は、万一のときに自分を守る材料です。

そしてこれだけは書いておきます。

転籍を断った事実と、あなたの働きの価値は別のものです。

切り分けて構いません。

解雇されるのか

「拒否 解雇」も、よく検索される組み合わせです。

答えは先に書いたとおり、拒否だけを理由とする解雇は解雇権の濫用として無効と判断されやすい、と整理されています。

転籍はそもそも同意が要る異動なので、同意しなかったこと自体は業務命令違反になりません

ただし、会社の業績悪化で部門ごと切り出されるような場面では、転籍拒否とは別の理屈で雇用の問題が起こる可能性はあります。

「解雇されないから安心」と言い切れるほど単純ではない、という距離感で捉えるのが現実的です。

退職を選ぶと会社都合になるのか

拒否の末に退職を選ぶ場合、「会社都合になりますか?」という疑問が出てきます。

これは状況次第です。

会社の再編で従来の雇用を続けられなくなった結果の退職であれば、会社都合と扱われる場合があります。

逆に、条件に納得できず自分から辞める形だと、自己都合とされる可能性もあります。

退職前に、離職票の区分がどうなるかを会社に確かめておくべきポイントです。

実は「転籍しないなら退職」という構図を、私は目の前で見てきました。

私の転籍は、勤めていた会社の清算がきっかけです。

示された道は2つでした。

親会社への転籍か、紹介会社を通じた再就職支援か。

会社そのものがなくなるため、「転籍を受け入れず、元の会社に残る」という道は初めからありません。

50名ほどいた社員のうち、最終的に転籍を選んだのは3名

残りの同僚たちは、会社を離れる道を選んでいます。

つまり、この章の冒頭で挙げた「元の会社に残る」という流れは、会社が残る再編での話です。

清算のように元の会社が消える再編では、拒否は事実上、退職の道と重なります

自分のケースで元の会社が残るのか、なくなるのか

拒否の重みは、そこでまるで違ってきます。

転籍を受け入れた私の退職区分は、会社都合でした

転籍は元の会社をいったん退職する扱いになるためです。

退職金の精算がどうなったかは転籍の退職金に300万円が上乗せされた実例に実額で書きました。

決められないまま過ごした1ヶ月半のことは、会社が清算されると決まってからの1ヶ月半に当時の温度のまま残しています。

最後に、正直に書いておきます。

清算のときの同僚たちは、拒否して争ったわけではなく、転籍しない道を選んで会社を離れていきました。

だから「拒否して元の会社に残った人が、その後どうなったか」を、私は見たことがありません。

いまの会社でどう扱われるかも断言できません。

ここまでの3つの流れは、制度と公開情報から言える一般的なまとめです。

この章の論点
  • 拒否だけを理由とする解雇は無効と判断されやすく、会社が残る再編なら雇用は続くのが原則
  • ただし配置転換・出向への切り替え・退職の方向など、その後の展開には会社の判断が働く

転籍を拒否する前に確認すべきこと4つ

断るにしても受けるにしても、答えを出す前に確かめておきたいことが4つあります。

転籍を拒否する前に確認すべきこと4つのチェックリスト。就業規則の転籍条項・会社の再編パターン・断り方・退職金と労働条件

1. 就業規則に転籍条項があるか

まず、自分の会社の就業規則です。

私は前の会社から転籍して、いまの会社に入りました。

その経験があったので、入社してすぐ就業規則の転籍条項を確かめています

会社の共有ネットワークに規程集があり、従業員なら誰でも開ける場所です。

私の会社の条項は「会社がやむを得ない事情があると判断した場合」といった書きぶりでした。

正直なところ、転籍を経験していなかったら、出向の話が出るまで規則を開くことはなかったと思います。

多くの人にとって就業規則は、何かが起きてから初めて読むものです。

でも、転籍の打診を受けてから読むのと、条項の存在を知ったうえで話を聞くのとでは、落ち着きが違います。

順番を逆にする価値があります

条項があっても個別同意が原則なのは、記事前半で書いたとおりです。

それでも、会社がどんな建て付けで転籍を打診してくるのかを知る手がかりになります。

2. 会社の再編パターンはどれか

転籍が発生する背景は、グループ経営の方針や組織再編によってさまざまです。

そして、再編のパターンによって法律の枠組みが変わります。

会社の再編パターン別の転籍と同意のルール早見表。事業譲渡は個別同意が原則・吸収合併は労働契約が存続会社へ自動承継・会社分割は労働契約承継法の別ルール

事業譲渡に伴う転籍(移籍)は、これまで書いたとおり個別同意が基本の枠組みです。

一方、吸収合併では労働契約が存続会社へそのまま引き継がれるため、転籍の同意という問題は基本的に生じないとされています。

注意したいのは会社分割です。

会社分割には労働契約承継法という別のルールがあります

承継される事業に主として従事している場合、労働契約が個別の同意なく新会社へ引き継がれる仕組みです。

異議を述べる手続きなども通常の転籍と異なります。

自分のケースがどのパターンかで、「同意が原則」の効き方が変わります。

打診のときに、どの枠組みの話なのかを確かめておきたいところです。

3. どう断るか(伝え方)

断ると決めたら、伝え方にも気を配りたいところです。

意思は理由とセットで伝えます

たとえば「家族の事情で通勤圏を変えられない」「労働条件の変化に納得できない」など。

理由に中身があるほど、会社側も次の対応を考えやすくなります。

感情的な対立の形にしないことが、残留後の働きやすさにもつながります。

そして、口頭のやりとりだけで終わらせず、日時と内容を記録に残すこと。

これは前の章で書いた自衛と同じ理由です。

会社には会社の事情があります。

敵と味方の構図にせず、それでも自分の意思は明確に。

これが基本線だと考えています。

4. 退職金と労働条件はどう変わるか

転籍は、元の会社をいったん退職して新しい会社に入り直す扱いになります。

だから、退職金の精算方法、勤続年数の通算、給与や休暇などの労働条件は、同意する前に必ず確かめるべき項目です。

確認の観点は、この後の「迷ったら」の章で紹介するデメリットのチェックリスト記事に一覧でまとめています。

退職金の精算がどうなったかの実例は、前の章で触れた退職金の記事のとおりです。

いーしげ

就業規則なんて、ちゃんと読んだことがなかったな……

この章の論点
  • 確かめるのは4つ。就業規則の条項・再編パターン・断り方・お金と労働条件
  • 会社分割だけは労働契約承継法という別枠のルールがある

転籍を拒否するか受け入れるか迷ったら

ここまで拒否する場合を中心に書いてきました。

ただ、拒否が正解とも受け入れが正解とも、一概には言えません

労働条件、退職金、通勤、その後のキャリア。

損得の出方が、人によってまるで違うからです。

私自身は転籍を受け入れた側でした。

それでも、決める前に確かめたいことは山ほどありました。

迷うのは当然です。

判断の軸としては、次の4つを並べてみることをおすすめします。

  1. 労働条件はどう変わるか(給与・休暇・勤務地)
  2. 退職金とお金の条件はどうなるか
  3. その会社で働き続けたい理由が自分にあるか
  4. 拒否した場合のその後(配置転換・再打診)を受け止められるか

デメリット側の確認事項はグループ会社への転籍のデメリットと確認事項4つが使えます。

番号を追って埋めていけば、感情ではなく条件で比べられるようになります。

迷いが深いときは、判断の前に自分の経験やスキルを棚卸ししておくと、軸ができます。

いまの仕事で積んだ経験は転籍先でも通用するのか、外の選択肢はどのくらいあるのか。

材料が増えるほど、拒否か受け入れかを「怖さ」ではなく「損得」で決められるようになります

いーしげ

材料が揃えば、あとは自分で決めるだけだ

この章の論点
  • 拒否か受け入れかは条件次第。4つの判断軸を並べて比べる
  • 迷いが深いときは、経験の棚卸しで判断の材料を増やす

まとめ|転籍の拒否は権利。ただし「その後」まで見て決める

要点をまとめます。

  • 転籍は労働契約の相手が変わる異動のため、本人の個別同意が原則(民法625条1項)。強制はできない
  • 拒否だけを理由とする解雇は無効と判断されやすい。その後は「残留」「別の異動の打診」「退職の方向」の3つに分かれる
  • 会社分割だけは労働契約承継法という別枠。自分の再編パターンを確かめる
  • 断るなら、理由とセットで、記録を残しながら。感情的な対立にはしない

そして、今日できる次の一歩はひとつです。

会社の就業規則を開いて、転籍条項があるかどうかを自分の目で確かめてください。

私の会社では共有ネットワークから数分で確認できました。

条項の存在を知っているだけで、いざ打診が来たときの落ち着きが変わります。

材料さえ揃えば、転籍は自分の意思で決められる人事異動です。

迷ったときは、この記事の4つの確認事項が出発点になります。

いーしげ
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